五種不翻

音写 おんしゃ   ごしゅふほん
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お経をサンスクリット語から中国語にする翻訳作業で、五種不翻という考え方があります。これは次のような五種類にあてはまるときは翻訳をせず、原語のまま使うという三蔵法師が提唱した考え方です。今の日本で言えば、外来語をカタカナ表記するようなものです。中国にはカタカナがありませんので、漢字での音写となります。

◆その1 インドにあっても中国にはない物の名前。例えばお不動さまの火炎に出てくる迦楼羅(カルラ)という鳥の名前。

◆その2 たくさんの意味を含んでいて一言では訳しにくいもの。例えば陀羅尼。

◆その3 意味を解釈するより、原語の音感を保つ方が、神秘的な効果も加わり適切と思われる場合。例えば慈救呪のような文章。

◆その4 いつからとなく使われていた音写で、すでに一般化していたもの。例えば般若心経に出てくる阿耨多羅三藐三菩提など。

◆その5 その2に似ているのですが、翻訳すると真意が失われる恐れの有るのも。例えば仏陀という言葉。

以前ASCIIという月刊誌で創刊から1年程、外国雑誌の記事紹介を書いたことがあります。ある日、ふとこの五種不翻を思い出しました。

日本でコンデンサと呼ばれている電気部品は、アメリカではキャパシタと呼ばれています。condenser も capacitor も、どちらも辞書では蓄電器と訳されています。また略号もどちらも"C"となるので、日本では誰も意識せずに使っていると思います。英訳の時には注意が必要ですが・・・

キャパシタは日本語に直すとコンデンサ? これ翻訳でしょうか?

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